補助犬とは「盲導犬」「介助犬」「聴導犬」の総称です
補助犬とは、身体に障害のある人のからだの一部となって、障害のある人の生活を支える手段のひとつです。
障害のある人がどんなことに困っていて、どんな配慮が必要なのかを、私たちが正しく理解することが大切です。
まずは補助犬について知ってもらうことで、皆さんの障害のある人への理解が深まっていくことを願っています。
盲導犬
目の不自由な人が安全に街中を歩けるように、段差や曲がり角などを教えます。
胴体にハーネスをつけているのが特徴です。
介助犬
手足が不自由な人に代わって、落としたものを拾ったり、ドアを開けたり、スイッチを押したりします。着がえも手伝います。
聴導犬
耳が不自由な人に代わって音を聞き、それを知らせます。車のクラクションやドアチャイムの音、非常ベルなどを教えます。
植草桂子さんが伝えたいこと
イラストレーターの植草桂子さん。お仕事のかたわら、神奈川介助犬聴導犬協会「ウェルフェアポート湘南」でお手伝いをしています。そんな桂子さんからお話を聞きました。
●介助犬のお仕事and役割
介助犬ができることは、落とした物を拾う・ドアの開閉・履物を脱がせるなどの簡単な作業でしかありません。些細なことですが障がい者にしてみれば、一人ではできないこと。その都度そばにいる人に頼むのは気兼ねも生じますが、その役割を介助犬が担うことで、障がい者の精神的負担が軽くなり、積極的な生活の後押をすることになります。
犬もまた人間を必要とする動物です。これはペットであろうと介助犬であろうと変わりありません。
ペットとして飼われているワンちゃんが、お手をしたりお座りをしたりする姿は、とても可愛らしく人の目に映ります。一方、介助犬が仕事をしている姿は、犬らしい生活を我慢して可愛そうと捉える人もいるようです。
「お手のような芸が可愛くて、人の生活を助ける仕事は可愛そう?」、、、なんかヘン。
実は犬にとって、人間の指示に従うこの行動はあまり大差ないことです。お手をして褒められた犬が喜ぶように、物を拾って褒められる介助犬もまた喜びを感じているということを知ってもらいたいのです。
人と犬が互いを必要とする関係は、かけがえのない存在として日常を支え、障がい者の自立をサポートします。
●介助犬になるまでや引退後(一生のこと)
介助犬になるには、その適性にあった犬が選ばれます。介助犬に向いていない犬を無理矢理訓練することはありません。はしゃぎ症でわんぱくな犬は、やっぱり家庭犬向き。ちなみに我が家にいるミックス犬は、お喋り過ぎて(要するによく吠えるということ)聴導犬になれなかったコです。聴覚障害者にとって、吠えやすい犬は周囲の配慮の面でN G。しかし健常者なら、その吠えにすぐ気づき「イケナイ」と注意できるので問題なしです。
介助犬はユーザーさんとどこに行くにも一緒です。大好きなご主人とずっと一緒にいられるのですから、ひょっとしたらお留守番が多いワンちゃんより楽しい生活かもしれません。
そんな蜜月で幸せな介助犬生活も10歳ほどで引退となります。補助犬は全て貸与なので、ユーザーさんの飼い犬ではないのです。何よりも障がい者にとって老犬のお世話は無理なこと。
引退した後は在籍する協会に戻ったり、一般のボランティアさんの家庭犬になります。離れ離れになるのは互いに辛い思いもあるでしょう。でもそのぶん里親には老犬の生活が豊かに過ごせるよう努力する必要があります。
かつて介助犬を卒業したスタンダードプードルのジルバを我が家に迎えたとき、私は「今までユーザーさんから受けていたたっぷりの愛情を引き継ぎ、同じくらい幸せな暮らしを続けさせてあげたい」と心に誓ったのを覚えています。
●セラピー犬のこと
セラピー犬は、海外では病院の訪問などで知られていますが、日本の現場では高齢者施設や児童施設などで活躍することが多いです。セラピー犬は犬種を問いませんが、第一に人好きで物おじしないこと、一般的な躾ができているうえでセラピー犬として必要な訓練を受けることが必要となります。
最近では犬と触れ合うことで幸せホルモンが出ることが証明されていますが、確かにセラピー犬は対象者に様々な効果を生み出しています。
以前、我が家にいた犬とセラピー活動として高齢者施設を訪れた時のこと。体を動かすこともできない重度の認知症のお年寄りに、手を添えて犬を撫でてもらった途端、感極まった様子で泣きはじめたことがありました。施設のスタッフによると「私たちが話しかけても何も反応がない方なのに!」と、びっくりされていました。それだけ犬には人が努力したところで及ばない力があるんですね。
現在はコロナ禍で施設訪問などができずにいます。また、日本の医療機関ではまだまだセラピー犬の受け入れが叶いません。
もっとセラピー犬の活躍できる日が、一刻も早くくることを願っています。