学校を卒業して、製作会社に入ったばかりの頃
上司のTさんに「万年筆買ってこい」って言われて。
会社が銀座だっので伊東屋に行って。
万年筆売り場にはもう本当に
1000円もしないのもあれば、10万円くらいするものまであって。
例えば、1000円のものを買って帰って
「こんな安物使えるか!」と怒られるかもしれないし、
かといって新入社員の私が何万円もするような万年筆を買ったら
経理の人に死ぬほど怒られるかもしれないし。
最悪自腹とか、返してこいとか、言われそうだし。
迷って迷って買えなくて。
戻ってTさんに「買えませんでした」
っていったら
「当たり前だ!万年筆はその人の価値を決めるようなものだ!」
と、理不尽なことを言われ、ああ、私は試されたのだなと。

そして、先日、そのTさんが退職なさるというので、
やっぱり私は伊東屋にいって。万年筆売り場で1時間くらい睨めっこして。
でも、やっぱり買えなくて。悩んで悩んで買えなくて。

Tさんに
「退職記念にリベンジ万年筆しようと思いましたができませんでした」
って白状して。Tさんは万年筆の話なんか覚えてなくて。

そんなもんだ。

しかし、大人になれば万年筆を選べると思っていたけど、
私は結局そういう大人にはなれなかったなぁ。

画像は3年前に初めてTさんが展示にきてくれて
あの絵、良かったなぁといってくれた絵。

また絵を描いてTさんに観てもらいたいなぁ。
やっぱり描き続けないといけないんだなぁと。

そんな夏の日。